hamabi芸術祭

社会人向け絵画教室

OBOGの活躍 hamabi出身の先輩たちの今

須藤 由希子さん
画家

須藤 由希子 SUTOU YUKIKO

横浜美術学院デザインコース出身
2001年 多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。
現在画家、イラストレーターとして活躍。主なイラストの仕事は絵本「この庭に 黒いミンクの話」(文:梨木香歩)の挿絵、映画「プール」(大森美香監督作品)のポスター原画など。

今日はhamabiのOGで、多摩美のグラフィックデザイン学科を卒業され、画家として、イラストレーターとして活躍されている須藤由希子さんにお越しいただき、自身の作品についてお話をうかがいました。(記事:2008年度のhamabiニュースより インタビュアー:講師北川)

北川・須藤さんは高3の夏休みに初めてhamabiに入ってきましたね。ちょっと遅いスタートですが、それまでは何をやりたいと考えていたんですか?

須藤・ずいぶん昔の話ですよね。その頃いろいろなことがやりたかったんです。最初は庭師になりたかったんですけど芋虫が嫌いだったので簡単に諦めて、次に料理人になりたいと思いました。これは本当になりたくて、管理栄養士の資格を取ろうと思っていました。高3の春頃までは生物が入試科目にある大学に行くつもりだったので、予備校に通っていました。何か違うんじゃないかと思い始めていた頃、私の前をトラックが通ったんです。トラックのボディーにデザインされた文字が描かれていて、こういうものを作っている人がいるということに初めて気がついたんですね。駅貼りのポスターなんかも、作っている人がいるということに気付いていなかったんです。そういう仕事があるということを初めて意識して、タイポグラフィーや広告の仕事がしたいと思いました。そのもっと前に、洋服の色合わせや、いろいろな素材を合わせたりとか、ひとり遊びのように熱中した時期がありました。その時は職業とは全く結びついていなかったんですけれども、初めてデザインという仕事ということで繋がったことを憶えています。

北川・実際にデザインを始めてみて、結局は広告関係には進まなかった訳ですけど、やはり、大学でやってみて何か違うという感覚があったんですか?

須藤・はい、絵を描き始めたら、広告よりも絵の方が自由でビジュアル的に素敵なものを自由に作ることができるということが、楽しかった。そのことが単純にありました。それでそっちの方に転がっていったんです。

北川・須藤さんは画家としての作品制作と、イラストレーターとしてのお仕事とが絵を描く仕事となっていますが、イラストの仕事を依頼された時は、須藤さんのこの作品を使いたいという依頼ですか、それとも新たに描いてほしいという依頼なんですか?

須藤・うーん、2種類あると思うんですけど、イラストを依頼されてから描きおろすことがほとんどですね。ただ、作品を展覧会などで見ていただいて依頼が来るので、自分で描く作品とイラストとの間には、それほど大きく差を感じずに描くことができているかもしれませんね。

北川・ということはやはり須藤さんの絵の世界観と、本であったり映画であったりという媒体が無理無く出会う訳ですよね。今度のこの「プール」という映画のポスターのイラストを依頼された時のお話を聞きたいと思います。

須藤・はい。これは一人で作ったというより、まずプロデューサーさんがいて、そのもとでデザイナーさん、写真家の方とチームで作ったという作品になっていて、私の絵と出演者の写真がコラージュされているものです。この絵に描かれているプールは映画の舞台で、タイのチェンマイにあるんですね。現地に呼んでいただいて、取材をしてきました。

須藤さんがイラストを担当した映画「プール」のポスター  原画は「バーンロムサイのプール」 2009 鉛筆、油彩、石膏下地、キャンバス 1650×1190mm    (C)  プール商会

北川・プールというモチーフとしての興味は、もともと持っていたんだよね。

須藤・ええ、プールの絵は以前に2枚描いたことがあります。やっぱり仕事でリンクしていくところがあったり、共通した気持ちを持てるということが作品を作る上では大事なことだと思いますし、この仕事ではそういうことがすごくあったんじゃないかと思います。

北川・須藤さんは絵を描く時に最も大事にしていることは何でしょう?一番神経を使うところというのは。

須藤・絵を描く時に、なんでこれを描くのかというと、その風景をすごく良いと思ったから描くんですよ。ですからその良いと思ったことをとにかく表現したいということが全てというか、そのことだけを考えています。

北川・でも須藤さんの描いた風景は、もしその場所に行ってみたとすると、実際の風景よりも絵の方が面白いと感じるんじゃないかと思いますが。

須藤・いや、いつも風景に負けている気がしています。自分で見て面白いと思うことは自分の中だけのことだから、絵に現れることは風景の一部で、確かにだからこそ私の絵というように見える訳ですが...。うーん...。

須藤由希子さん作品「鉢植えと家ー深沢」

北川・風景から自分が良いと思ったことを抽出し切れていないという感覚があるのですか?でも風景が面白いんではなくて、それを絵にしたときに絶対に面白いに違いないという絵描きとしての眼で見ているから面白いものを抽出することが出来るんですよね。

須藤・それはそうですね。風景に出会ったとたんに構図まで浮かんでくるということはあります。でも、それだけではなく、それと同時に、どうなるか判らない。出来るかどうか判らないけどやってみようという、そういうドキドキする部分はとても大切にしています。

北川・須藤さんの作品は有彩色もパートカラー的には使っていますが、鉛筆を素材にしているということで基本的には白黒の世界なんですね。でも、いろいろな白があり、いろいろな黒があって、色が非常にきれいですね。

須藤・もともと鉛筆を使い始めたのは鉛筆の質感が好きだからで、必然的に白黒になっていったんです。hamabiの頃は色を使うのが大好きだったんですけど、それが急になくなってしまって鉛筆が好きになってしまったんですね。色がきれいと言っていただいて嬉しいですね。でも普段気にしていることは、色というよりは空気感をいちばん大事にしています。ですからその中に色も含まれているのかなと思います。

北川・この絵は室内の空気感に対しての外の世界の空気感の違いが面白いよね。

須藤由希子さん作品「ベットと窓」

須藤・この絵なんかはhamabiに通っていなければ描けなかった絵です。私は大学というより、hamabiで学んだことの方が勉強になったんで。鉛筆を素材としているっていうこともあると思うんですけど、今でもその頃に教わったことが頭をよぎりますよ。

北川・今日はどうもありがとうございました。また遊びにきてください。