今回は油彩とテンペラの混合技法による自画像の制作プロセスを紹介します。
テンペラとは油彩のシステムが作られる以前の古典技法です。
絵の具を溶くメディウムを卵黄、スタンドオイルという市販のオイル、自作のダンマル樹脂溶液で作り、さらに水を加え、水性と油性の中間の乳濁液(エマルジョン)の状態にします。
そのテンペラメディウムに顔料を混ぜ、筆で描いていきます。

MFDボードに膠水をひき、カラージェッソ(アクリル系の下地用絵の具) のレッドオーカーを塗ります。
紙ヤスリで表面をつるつるにした後、自画像を下描きします。
そしてチタニウムホワイトの顔料をテンペラメディウムで溶いた絵具で描き起こしていきます(白色浮出)。
表面をヤスリがけしたのは、細い線がひきやすいようにからです。
この時、筆は細描き用の面相筆という筆を使います。ハッチングという網の目状に細かい線を重ねていく技法を使い、 細かい線の集積で調子の変化と形を追っていきます。
ここでは、簡単に輪郭を括らない事がポイントです。
大変な作業ですが、顔の形を理解する上で、とても重要な経験です。

髪の毛に下地を置きます。肌の部分はレッドオーカーでしたが、髪の毛はブラックに少しだけアンバー系の色を加えます。
これもテンペラを使っています。
そして、テールベルトをテレピン油とダンマル樹脂溶液で希釈し、薄く全体に塗り重ねて(グレーズといいます)
透層を施します。

テンペラメディウムを使いホワイトで描きおこします。
テンペラメディウムは油彩の上に描く事ができるので、このような混合技法ができるのです。
「白色浮出」を行った後、今度はレーキ系の透層を施します。
そしてまたテンペラで描きおこします。

油彩で背景をつけ、肌の質感や、色味のバランスを見ながら描き進めます。
背景は2〜3層、筆の先端で叩くように絵の具を置く叩き筆で塗ります。
肌はグレーズをしたり、場所によってはぼかしたりします。
服の部分は堅くならないよう、質が出るように描いています。
常に全体に気をくばりながら、バランスよく描くのがコツです。
細密な描写は、視野がついつい部分的になりがちになるので気をつけましょう。
また背景との関係は、身体や頭部の輪郭が単調にならないように、空間を考えながら仕上げていきます。

目の周辺の拡大

頭部などまだまだ描きこんでいく事ができるようですが、今回は、ここで筆を止めておきます。