hamabi芸術祭

社会人向け絵画教室

制作プロセス 実際の授業の制作プロセスを公開

有彩色細密描写 高3生・高卒生科デザイン・工芸芸大コース

有彩色細密描写<亀>

出題:有彩色細密描写
B4サイズ画用紙・アクリル絵の具
高3生・高卒生科デザイン・工芸芸大コース
M.S.さん(高卒生)作品

対象を、自分が意図したとおりに表現できる力を身に付けることは、誰もが望むことです。それには、画面の中で、何が必要で何が必要でないかを取捨選択する目が必要ですが、何となくそれを探るだけではなく、とことん対象に食いついて描ききってみるという経験も必要です。手を動かす前に、一度対象をしっかり観察して構造を理解しましょう。

描き出し

まず、最も自分が対象を把握しやすい視点から構図を決め、軽く全体に当たりをつけてから、淡いトーンの絵の具を置いていきます。
このとき、輪郭的な形にこだわりすぎて絵の具を輪郭の内側に塗っていくのではなく、むしろ対象に手で触れていくような感覚で絵の具を置くといいでしょう。
< 写真上> 気持ち良さそうに筆を置いていますが、甲羅の下側から前脚、首にかけての形が一見単純に見えることに引きずられて、形がやや輪郭的に流れてしまっているように見えます。

制作過程1

自分に近いところから積極的に絵の具を置いて、手前・奥の空間を見せようとしているようですが < 写真上> 、先にも触れたように、形が構造的にイメージされていないため、その取り組みもやや観念的に見えてしまいます。描き初めよりもむしろ空間的には痩せてきているでしょう。
作者がどの時点でそのことに気づき、積極的に画面の中で揺さぶっていけるか、それがポイントになります。細密描写の場合は、特に制作の途中で、形が硬くなってしまうということがありますが、対象を細かく写すことだけに意識が向いてしまうと、なかなかそこから抜け出られなくなります。

制作過程2

基本的には描き出しからのものの見方に大きな変化がないまま描き進んでいます。 <写真上 >
具体的な描写を進めることによって、甲羅とそれ以外の部分の質の違いを利用して、リズムを変えようとしているのかもしれませんが、ここまではまだそのことに成功していません。
むしろ、甲羅の正中線の延長上の位置から出ているはずの首まで、前脚の付け根から出てきているようにすら見えます。
他にも前脚が骨格のないもののようにぐにゃりと曲がって見えてしまっていたり、下側の甲羅の位置が、すべて同じ平面上にあるように見えてしまったりしています。

完成作

< 写真上 > 完成です。
途中気になっていた部分はかなり改善されましたが、描写を進めていくことで表情に幅が出たものの、首の位置のズレの印象は残っています。
また、形同士が交差している部分を利用して、空間的にメリハリを作ってやることなど、「関係」を描くことには弱さを感じます。
部分的にはかなりしっかりと描けていても、基本的な構造を捉まえ損なうと、ラフに描かれたものよりも一層印象の違いが目立つものです。
甲羅の一番手前の端がしっかりとした位置を感じさせてくれれば、画面の上半分の背景の空間がもっと自然に感じられたでしょう。