芸大・美大受験の専門予備校「横浜美術学院」

横浜美術学院

どんな風に描いているの? 制作プロセス

「静物写生」/受験科絵画コース日本画クラス

2008年1月30日up!

日本画の授業の柱は、石膏デッサンと静物写生です。今回は、東京芸術大学の入試のスタイルで制作しています。東京芸術大学の入試では、一人に1セットずつモチーフが渡されそれを自分で台上に配置して描きますが、イーゼルの使用は不可なので、画面をモチーフ台や椅子に立て掛けたり床に置いたりして制作します。そのため、作者が視点を高くすることができないので、今回のモチーフではモチーフ台の上の面がほとんど見えません。さらに、バイオリンはとても難易度の高いモチーフですから、果たして作者がどこまで完成度の高い作品が作れるか、幾分心配です。

〈写真左〉まず、通常のデッサンのように全体の関係を見ながら大きく当たりを入れていきます。高いレベルの描写力と正確な三次元空間の再現力が求められるので、デッサンレベルの精度もかなり高くなくてはなりません。大まかな感じだけつかんでおいて後は絵の具で具体的に描き進めていくという方法ではなく、正確なデッサンを下敷きにしてその上に絵の具を置いていくという手法は、西洋絵画の古典技法に似ているといえるかもしれません。

〈写真右〉かなり描き進んできました。輪郭的な形は大体押さえてきているようですが、肝心のバイオリンの形が、軸に対して直角に位置しているはずの形に僅かに歪みがあります。輪郭を追うやり方だとありがちな狂いですが、例えば、バイオリンの本体の中の形を想像するような空間的な意識を持って形を探っていくことができれば、修正していけると思います。画面全体の三次元空間の再現も、まだまだ薄っぺらい所がありますから、この後ただ単に細部を描き進めるのではなく、相対的な位置関係に細心の注意を払いながら詰めていきたいものです。

〈写真左〉下描きの終了です。左の状態と比べると、かなり具体的な位置関係や質の違いなどが押さえられていて、空間的にも大きくなってきました。モチーフ台の上の面が見えないことで、バイオリンの奥にあるものは、見えるものの情報を意識的に選択して描くことで、位置関係を感じさせなければならないということになります。色彩が固有色の再現という役わりにとどまらず、絵画の中で空間的な関係を作り出していくことに機能させることができれば、それは十分に可能だと思います。

〈写真右〉絵の具が置かれ始めました。画面の中の手前に位置しているものから優先的に手を入れていくというのは、最終的に画面の張りを弱めてしまう原因にもなるので、あまり誉められたことではありませんが、バイオリンの出来不出来がこの作品では決定的な意味を持つのと、描き切るにはかなりの手数も必要だということからこういう入り方になったのでしょう。ただ、作者はやみくもにバイオリンを描いているのではなく、画面全体の空間も十分意識に入っているということは、アクリルの円筒に挿してある稲穂の一部や奥の葡萄にも触れていることから伺うことができます。

〈写真左〉バイオリンの部分は早くもかなりの密度になってきました。奥の譜面台や楽譜を描くことによって、手前と奥で台上の空間を挟み込もうとしています。同時に、点在している葡萄の色彩を空間的な関係の中で響かせながら探っていっていますが、挟まれた状態のアクリルの円筒と稲に積極的にアプローチしていないため、まだ漠然とした状態でしか位置関係がつかめていません。

〈写真右〉完成です。アクリルの円筒が抱えている空間が、やや薄っぺらくなってしまっているのが残念ですが、手前のバイオリンとケースのあたりは、かなり見事に表現できています。例えば花のような、ビビッドな色彩のものが含まれているモチーフではないので、かなり意識しないと鈍い画面になりがちなのですが、作者は必要以上に色の彩度を落とさず、生き生きとした画面に仕上げています。手前のバイオリンのボディーの光沢や弦の部分は、ホワイトの絵の具で描いたのではなく、紙の白さをそのまま残して表現しています。

ハマ美の授業で実際に制作している様子をご紹介しています。普段はあまり見る事の出来ない制作プロセスを見る事で、これまで何気なく見ていた作品への見方がきっと変わると思います!不定期に更新していきますのでたまにチェックしてみて下さい!

今回の一枚

静物写生
P20サイズ・水彩絵の具
絵画コース日本画クラス Y.H.さん(高卒生)作品

拡大画像がご覧になれます。

アトリエ内に組まれた静物

これまでの授業のご紹介

こぼれ話

グリザイユ

水彩絵の具とは水溶性の絵の具の総称で、油絵具と対比して使われることの多い呼び名です。絵の具は、色彩を基底材に固着させる方法の違いで分類(油絵の具、アクリル絵の具など)したり、絵の具そのものの性質で分類 (透明水彩、不透明水彩など) したり、さまざまな分類の仕方があり、水性か油性かという分類では、アクリル絵の具テンペラの絵具

フレスコの絵具も水性の仲間に入りますが、通常は、透明水彩絵の具と不透明水彩絵の具のことを水彩絵の具と呼ぶことが多いようです。このふたつの絵具は、読んで字の如しの異なる性質を持っており、前者は基底材の紙の白さを活かして描くことでその魅力を発揮し、後者は被覆力が強いため、しっかりと画面に置いて絵の具の抵抗感を作るのに向いています。日本画の授業では、これらの異なる性質を利用して目的に応じて併用しています。いずれも、一度乾いた後でも絵の具は簡単に水で溶けるため、あらかじめパレットに、作者が使いやすいように絵の具をチューブから出して、並べて使います。